2020年7月25日
2020年7月24日、ロンドンの共同通信によると「5G契約数、25年に28億件 6年で230倍に急成長の見通し」という記事が配信された。これは、スウェーデンの通信機器大手エリクソンの調査によるもので、19年時点で5G の契約件数1200万件が6年後には230倍になると発表したものです。
いよいよ動き出したとデジタル化の可能性に心躍る私ですが、ちなみに5G について言葉だけが先行して、ご存知ない方もいらっしゃるので、簡単に説明させて頂きます。
この第5世代移動通信システム(5G)には、大きく3つの性能があります。1つ目は「超高速」で、現在の携帯より100倍速いと言われ、だいたい2時間の映画なら3秒でダウンロード(LTEは約5分)が可能です。2つ目は「超低遅延」です。実際、1ミリ秒程度の遅れしかないので、とにかくサクサク気持ちよく動きます。ロボットをリアルタイムで遠隔操作するアニメがよくありますが、やっと現実の世界にやって来たのです。そして3つ目は「多数同時接続」です。例えば自宅の部屋でしたら約100個の端末を同時に使えるスケールです。実際にはそんな部屋はめったにないと思いますが、全ての家電や通信機器などを一元化することで超便利になります。
また、これらを企業に置き換えると、工場の生産ラインにある有線のネットワークから解き放たれ、利便性に合わせた自由なレイアウトでスペース活用し、更にAIやロボットを組み合わせれば、効率化やコスト削減なども可能です。
後、総務省が進めている「ローカル5G」というのもあり、こちらは免許制ですが、自治体の地域行政サービスや、防災、企業内のローカルスポットに使われるシステムなど、あらゆる分野横断型に「5G」は進行しています。まさに胸ときめく『デジタルトランスフォーメーション』です。
しかし、非常に残念なこともあります。この可能性を秘めた「5G」というグローバルな通信規格は、本来なら人や国、あらゆる世界を結ぶ人類のテクノロジーだったのですが、現在は、米国と中国の主導権争いと貿易摩擦の影響で、地球を2つに分断してしまう可能性が出て来ました。
それは2種類の規格が存在すれば2種類の無駄な部品にもなり、お互いに使えない電子ゴミ(イーウェイスト)が発生する環境問題となります。そして延いては人権問題、国家安全保障問題までなりかねないと不安が拭い切れません。世界のデジタルテクノロジーを結ぶ【エシカル・ポリシー】が人類に必要です・・・。
世界のイーウェイスト問題
今回も前回に引き続き【イーウェイスト問題】、電子機器廃棄に関する【エシカルテック】についてお話します。
この問題を国連では、海のプラスチック汚染以上に深刻だと言われています。プラスチック問題といえば、7月1日からレジ袋が有料化になり、一般消費者を巻き込んだエシカルな取り組が始まりました。しかし、日本の【イーウェイスト】は、スマートフォン・タブレット・PC、周辺機器など、毎日のように電子ゴミとして排出し、世界から注目されているのに、私たちは殆んど問題意識がありません。
世界経済フォーラム(ダボス会議)でもこの問題について話し合われています。
『今こそ世界が手を組み、廃棄物を減らすことが出来れば、その効果はデバイスの再利用に留まらず、サステナブルな産業、新たな雇用、経済活動、教育を生み出す。』と・・・。
世界では既に、電子機器廃棄物の処理に関する法改正も始まり、代表的なテックメーカーは、目標を公式発表しています。
例えば、Appleは2年前、『近い将来、地球の採掘を止め、100%再利用の素材のみでデバイスを製造する』と宣言しました。先月、Appleがインテルを使わず、自社製造を表明しましたが、この背景には、この【イーウェイスト】が関係してると言われています。
日本は、毎年世界で排出される電子ゴミ4850万トンの内、約5%の230万トンを排出していますが、しかし実際はそれに留まらず、中古品として中国や東南アジアに輸出されるものも多く、その場合、バーゼル条約の適用を免れ、現実にその数倍の【イーウェイスト】を出しています。
更には信じがたいことですが、その電子ゴミは海を渡り、アフリカに廃棄されています。日本人が捨てた【イーウェイスト】は、アフリカの自然環境を破壊しています。つまりあなたが捨てたスマホやPCが地球の環境破壊と繋がってるのです。皆さんはどう感じますか?
エシカルテックは人類のテーマです
また、電子ゴミは、【都市鉱山】とも言われ、注目されています。電子ゴミの中には、金、1トン当たりの比較で、金鉱石よりも廃棄された携帯電話の方が、100倍も含有量が多いそうです。とはいえ良いことだけではなく、これらを取り出すために不法な焼却が行われ、また有害なカドミウムや水銀も多く含まれており環境に適していません。
皆さん、私たちはこの問題に背を向けてはいけません。自分の国・地域・企業・個人の都合や利益だけでなく、先ずは、問題意識を持ち、関係する諸国をまとめ、関係する企業・業者をまとめ、生産・消費・廃棄、そしてそれらを循環させるトータルな【エシカルテック・スキーム】の構築が急務です。
イギリスでは、自分の利益を犠牲にしても社会貢献・環境貢献をする人のことを【エシカル・ヒーロー】と言います。そして、それは国や年齢、性別も関係なく、特別な人を対象に言うのではありません。ですから、今からでも私たちにできる、モノを大事に使い、無駄をなくし、リサイクル、リユースを始め、あなたも【エシカル・ヒーロー】になってください。
テック産業アナリスト のと裕行でした。
ありがとうございました。
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