テック産業アナリスト-のと裕行のライフイノベーションコラム-37
企業×通貨テック=企業デジタル通貨の可能性デジタル化による「企業内通貨」から「企業内外通貨」へ

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2020年10月10日

ミヒャエル・エンデの遺言

実は、今回のテーマを考えるキッカケになったのは、1999年5月にNHK-BS放送(NHKスペシャル)としてオンエアされた『エンデの遺言~根源からお金を問うこと~』という番組の動画を見たことがきっかけでした。

ミヒャエル・エンデは、ドイツの児童文学作家で『はてしない物語』や『モモ』など数多くの小説・絵本・詩集・戯曲を残しています。また奥様が日本人の翻訳家の方だということもあり、日本との関わりも深く、長野県の信濃町にある「黒姫童話館」には2000点を超える作品資料が寄贈されていて、世界で唯一ミヒャエル・エンデの常設展示しています。

そんなエンデの『モモ』では、お金と時間を置き換え、現代の経済システム基盤を風刺しています。「時間貯蓄銀行」という灰色の男たちが、時間を貯蓄すれば命が倍になると偽り、人々から時間を盗み、不労所得や投資などの利潤を生み出し、「お金にも倫理が存在する」ことをメッセージしています。

またエンデは、お金には2種類あり、それは【お金(パンを買うお金)】と【資本(お金自体が商品として扱われ、利子や投資により利潤を生む)】は違うもので、本来のお金は地球の生態系と同様に生きてるもので、「老化する」ものだと考えていました。

そしてその「老化する消費期限のあるお金」を評価し、通貨に生かすことで経済は循環すると番組でも伝えていました。

これだけ聞くとメルヘンのような話に聞こえますが、実は【通貨の真実】はここに存在し、リブラや企業通貨で私が伝えたい未来経済のビジョンもここにあると信じています。

デジタル化だからこそ実現可能な企業通貨

元々【企業通貨】といえば、航空会社のマイレージサービスの「空」から始まり、その後、企業が独自に発行するポイントプログラムによる商品やサービスと交換できる「陸マイラー」に変わりました。そして今では『電子マネー』の総称となり、

例えば

「Suica」や「ICOCA」のようなプリペイド、ポストペイ方式のドコモの「iD」、スルッとKANSAIの「PiTaPa」、また、スマートフォンをベースとしたQRコード、バーコード決裁の「PayPay」や「LINEPay」・・・。

最近では総務省が取り組む「マイナンバーカード」との連携による「キャッシュレス・ポイント還元事業」の「マイナポイント」、そして各種クレジットカードや銀行との提携と可能性は更に拡がっています。

もちろん、富士通グループでもこれらの方向性を見据え、デジタル通貨やポイントなどの相互交換による、利便性向上と流通促進を目的としたプラットフォーム事業を『JCB』と共同プロジェクトをスタートさせています。

そして私は、今後、デジタル化、DX化する中で、これらの【通貨】をどう考えるかが未来の社会経済のカギだと思っています。

話は変わって、皆さんは、オーストリアのヴェルグルで発行された【労働証明書】という地域通貨があったことをご存知ですか?

これは『エンデの遺言』でも紹介されたのですが、1932年、世界大恐慌の波がこの町にも訪れ、人口約5000人ほどの町に、失業者400人、町の生産は停止し、1000人の失業者予備軍に高齢者、子どもたちを入れると殆んどが失業者状態となり、当然、町の税収は激減し、町は破綻寸前の状態でした。

しかし、ドイツの経済学者シルビオ・ゲゼルが提唱した【自由化弊理論】を信じた当時の町長が、それに習い地方銀行からお金を借り入れ、それを、公債に転換させ【労働証明書】という地域通貨を発行し、給与として払ったのです。

ただし、この【労働証明書】には仕掛けがあり、保証はするけど、毎月1%減価される「老化するお金」の仕組みを取り入れたのです。

すると、この通貨を受け取った人は、ヴェルグルの町で積極的に消費活動を行い、結果的には、オーストリア通貨と比較し、なんと10倍の流通がされ、税収も増え、上下水道などの町のインフラも整備し、世界大恐慌後も完全雇用を果たし、『ヴェルグルの奇跡』と言われるようになったのです。

私はこの『通貨の奇跡』に学び、これを【企業通貨】にも活用できるのではと考えました。

つまり企業内で発行される通貨を企業が社外通貨として保証し、そして【企業内で発行する通貨】を給与として支払い、更にこの【企業デジタル通貨】を使えば企業でしか出来ないポイント還元やサービスの提供をします。

しかし、この追加ポイントやサービスには消費期限を設け、例えば社内の福利厚生や社員食堂のポイントだけではなく、企業に勤める社員全員の電気・水道・ガス・電話代など毎月流動性の高いものを全てまとめて【企業デジタル通貨】で肩代わりします。

もちろん拒否するのも構いませんし、本人だけでなく家族もまとめるのもオッケーです。

そして、企業は内需経営として努力をし、将来は、社外でも展開させます。

いかがでしょうか?

私は【デジタル通貨】に未来の可能性を感じています。

テック産業アナリスト のと裕行でした。
ありがとうございました。

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