テック産業アナリスト-のと裕行のライフイノベーションコラム-43
#43 電気自動車(EV : Electric Vehicle)×テクノロジー=EVテック(EV Tech)③ EV革命の波は環境規制という政府との戦い

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2020年11月21日

各国政府VS世界の自動車メーカー「環境規制」は誰のために?

2020年11月18日、日経新聞の電子版に『温暖化ガス排出の削減に向け、ガソリン車規制が世界各地で相次いでいる。英政府は17日、ガソリン車とディーゼル車の新車販売を5年前倒し、2030年までに禁止すると発表した』という記事が掲載されました。

他にも、カナダのケベック州も2035年まで、アメリカのカリフォルニア州では35年、フランス40年、以前紹介した中国も35年をメドに環境対応車のみとする方針を次々と各国政府は規制に乗り出し、電気自動車(EV)など、新エネルギー車の普及が進んでいます。

しかし、これらの突然な規制強化案に世界の自動車業界は困惑を通り越し反発しています。先日もゼネラル・モータースなど主要大手3社、日本ではトヨタ、ホンダなどが加盟(テスラは入ってません)する「米国自動車イノベーション協会(AAI)」は『規制による市場構築は成功しない』と声明を発表しました。

私ももちろん、環境問題を軽んじてる訳ではありませんが、このしわ寄せがメーカー各社、そして私たち消費者に来るのではないかと心配でなりません。それに、今までハイブリッド車を中心に世界市場に取り組んできた日本のメーカーにとって、これは死活問題となる緊急事態です。

昨日20日、日本政府は『気候非常事態宣言』の環境決議を全会一致で採択しました。

果たして政府は、これから日本の自動車業界に対してどういった対応をし、国民の見方となってくれるのでしょうか。

電気自動車はガソリン車よりも早く開発されていた

第三弾は、電気自動車における環境規制についてお話したいと思いますが、その前に、改めて「電気自動車・EV(Electric Vehicle)」の歴史と仕組みについてご説明させてい頂きます。

一般的に、電気自動車のことを新たなテクノロジーと思われてる方が多いですが、実はガソリン車よりも約半世紀前の1830年に誕生しました。その後、1920年頃まで電気自動車は発展、量産もされ、1900年頃のアメリカ、ニューヨークを走るタクシー全てが、電気自動車という時代もありました。

そして、その当時から電気自動車のメリットは変わらず、「騒音振動がない」「排ガスがなく臭いもしない」「ギアシフトがなく操作が簡単」「始動に手間が掛からない」ことからシティカーといわれ、女性に人気でした。

しかし、電気自動車が衰退したのには理由があります。

もちろん、スピードが遅く、走行距離が短いというデメリットもありましたが、最大の理由は、【各国の政府が化石燃料】を使用する政策を行い、更に【技術支援を金銭的】に行ったからです。

とはいえ、もしもこの時点で電気自動車というテクノロジーが継続、進化していたら、今のような環境問題は起こらなかったのかもしれません。

3つのバランスの取れた関係とは?

次に、電気自動車の仕組みはシンプルで「モーター」「バッテリー」「コントローラー」という【3つのバランスの取れたテクノロジー】です。

「モーター」は、直流・交流を組合せ、直流は安価でスピード面に、交流はより細やかな制御として使われています。

「バッテリー」は、主にリチウムイオン電池・ニッケル水素電池が使われ、今も昔も役割は充電した電気を蓄えておくことです。この自動車におけるテクノロジーとしては、それをバッテリーパックといい、モーターコントロールやバッテリーの管理、冷却システムなどをまとめます。1900年代から最も進化したテクノロジーは「バッテリー」で、このエネルギーの要を各社競い合っています。

「コントローラー」は、アクセル・ペダルと連動し、モーターとバッテリーパックをコントロールして、エネルギーの調整を行います。大切なことは、この仕組みで動く【電気自動車というテクノロジー】に排気ガスはありません。【ゼロエミッション・カー】です。

そして、再びこのテクノロジーが、地球・各国・各エリアの環境に適しているからと、【各国の政府がクリーンエネルギー】を使う政策を行い、【技術支援を金銭的】に行うのと同時に【環境規制というペナルティ】を課すことになったのです。

歴史は繰り返すと言いますが、約120年前と同じ政治的な展開が、再び自動車メーカーを苦しめ、状況によっては消費者への負担にもなっています。

特にこの【環境規制というペナルティ】が私は問題だと思っています。

代表的なものを1つ紹介すると、日本でも導入がきまった【CAFE規制(Corporate Average Fuel Efficiencyの略称)】です。元々は、欧州連合(EU)から始まりアメリカ、そして世界各国へと広がった環境規制です。しかし、各国で基準は様々で、例えば来年度から取り入れられる欧州の【CAFE規制】は、メーカー単位に、走行1㎞あたりCO2の排出量を15年の目標値と比較して約3割少ない95グラムに減らすことを義務付けています。

もしも基準値を上回ると、1台1グラムあたり95ユーロ(約1万2千円)のペナルティを各メーカーは支払わなければならないのです。

例えば販売台数の多いトヨタ自動車でシュミレーションすると約22億円が罰金となってしまいます。また主要13社合わせると、21年度の推移で1.8兆円が罰金となるそうです。

私の心配は2つです。

1つはこの高い環境基準のしわ寄せが、消費者の負担になる可能性があるということと、もう1つは、この規制に拍車がかかり、アメリカの【ZEV規制(zero emission vehicle requirementの略で、排出ガスを一切出さない電気自動車や燃料電池車を指す)】や【CAFÉ規制】など本来の目的が薄れ、各国政府の資金集めの目的にならないかです。

とはいえ、日本の【CAFE規制】の罰金を政府の資料で確認すると、1台でも何百万台、違反をしても各メーカー一律100万円の計画です。海外とは少し違い燃費に関する規制とも言われてます。

本当に環境問題という大義の規制なら、私たち消費者に分かりやすく、もっとシンプルに

「政府」「メーカー」「地球環境」という【3つのバランスの取れた関係】を作れないものでしょうか・・・。

テック産業アナリスト のと裕行でした。
ありがとうございました。

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