テック産業アナリスト-のと裕行のライフイノベーションコラム-74
エコロジー(Ecology)×テクノロジー(Technology)=エコテック(EcoTech)③ 海洋プラスティック問題を考える

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2021年7月24日

地球上の魚の重量を、プラスチックゴミの重量が2050年に超える⁈

今回は、エコテックの第三弾として、以前コラムの64号で紹介した「水セキュリティ」の問題に続き、【海洋プラスティック】をテーマに、海の生態系や海洋生物に悪影響を及ぼす

プラスチックの現状を知って頂き、今後どうするべきなのかを一緒に考えていきたいと思います。

またこれは、SDGsの目標14『海の豊かさを守ろう』でも取り上げられている国際問題でもあり、私たち人類が使用した【プラスチックゴミ】が、年間約800万トンも海に流出し、

もしもこのままの状態が2050年まで続けば、海の中にある【プラスチックゴミ】の重量が、

魚の重量を超える可能性があると世界経済フォーラムで試算、そして発表され、衝撃を受けた環境問題です。

そして国連の資料によると、現実的にも海洋生物たちに日々影響を及ぼしていて、【プラスチックゴミ】をエサと間違えて食べた生物たちは、体内で消化されないため、内臓を傷つけ、

炎症や摂食障害、窒息死、腸閉塞により死んでしまう事例が世界で後を絶ちません。

また他にもこの問題は、「海鳥(うみどり)」の90%がプラスチックゴミを摂取し、この状態が続けば、2050年には99%に達する可能性があります。

またプランクトンが飲み込めるほど小さな、マイクロプラスチックもあり、そのプランクトンを食べた魚貝類の体内に蓄積されるだけではなく、サンゴに取り込まれることで、サンゴと共生関係にある褐虫藻(かっちゅうそう)を減らす原因にもなり、光合成ができる共生関係を崩すことも報告されていました。

海に住む50万種の生物の4分の1がサンゴ礁に暮らしていて、海水のCO2濃度を調節する役割を持つサンゴに影響することは、海全体の生態系に影響を及ぼすことにもなるそうです。

つまりサンゴが育たなくなる原因は、気候変動による「海洋酸性化」だけが原因ではなく、「海洋プラスティック」による影響も大きいということです。

そして、日本人にとっては食生活に影響する漁獲量の低下も招いています。

また、同時に市場で売られている魚貝類の体内に蓄積されたプラスチックが原因による、食への安全も懸念されています。

「日本財団ジャーナル」によるとプラスチックに使われる添加物には、有害性のものもあり、人間の身体にどのような影響を及ぼすかは明らかではないですが、現段階でも、肺の組織に悪影響を与える可能性を示唆しています。

ゴミでもっとも問題視されるのは「マイクロプラスチック」

そして、プラスチックゴミの中でも現状、もっとも問題視されているのが、【マイクロプラスチック】です。

これは読んで字のごとく極小のプラスチックで、定義としては、5ミリメートル以下のプラスチックをいいます。

そして、大きく分けて「一次マイクロプラスチック」と「二次マイクロプラスチック」に分類されます。

「一次マイクロプラスチック」は、

洗顔料・歯磨き粉といったスクラブ剤などに使用される小さなプラスチックのことで、主に家庭の排水溝から下水処理を通り海へと流れますが、一度流出すると回収は困難です。また、一般的にスクラブ剤にマイクロプラスチックが含まれていることを知らない人が多いのも問題点です。

「二次マイクロプラスチック」は、

街や路上などにむやみにすてられたビニール袋、レジ袋、ペットボトル、タバコのフィルターなどのプラスチック製品が、排水溝などから川を伝い海へ流出し、紫外線による劣化や波の作用でこなごなになり、マイクロサイズ化したものです。

ここまででも【海洋プラスティック問題】がどれほど環境に大きな影響を及ぼし、また、想像以上に身近な問題であることがお分かり頂けたと思います。

日本の海を汚してるのはペットボトルやレジ袋じゃなくて「人工芝」だった⁈

そして次は、リアルな【海洋プラスティック】問題をお伝えするために、

環境ベンチャー『ピリカ社』が、2018年~2020年に東京湾など国内外の河川や港湾の「浮遊マイクロプラスチック」を採取、調査したデータを紹介します。

この120地点中112地点で採取された「マイクロプラスチック」の結果ですが、成分としては「PE(ポリエチレン)48%」「PP(ポリプロピレン)29%」「PA(ポリアミド)5%」が特定され、その中で一番多く採取された製品名は、なんと【人工芝のマイクロプラスチック】だったのです。

勝手なイメージとして思っていたのは、ペットボトルやレジ袋だったのですが、それよりも【人工芝のマイクロプラスチック】が海を汚す原因だと知っている国民が、どれだけいるのでしょうか。

確かに、日本にはサッカー場、ゴルフ場、野球場、テニスコート、学校、大型商業施設など、

人工芝が使われている施設が多く、そして何よりも、レジ袋やペットボトル以上に【海洋プラスチックゴミ】の一番の原因が【人工芝のマイクロプラスチック】であるなら、政策として、レジ袋を有料にする以前に、【人工芝】対策を重要な環境問題として、日本は取り組むべきではないかと思いました。

日本はどうする⁈ドイツは人工芝対策を2019年から取り組んでいる

この問題に関して海外の状況を調べてみたところ、環境先進国ドイツでは、すでに2019年から【ドイツ連邦議会とドイツサッカー協会】が取り組んでいました。

2019年11月15日『気候保護法』を採択したドイツは、【海洋プラスチックゴミ】に関係する調査が進められた結果、人工芝だけでなく、人工芝の弾力性のためにメンテナンスとして撒かれている【顆粒状のマイクロプラスチック】も問題視していて、練習や試合で飛び散り、雨などで流れ、地下水が汚染されることにより、動物や人間に、また川や海へ流れ害が出るということから、ドイツにある【約5000の人工芝サッカーコート】すべてに対し対策を行っていました。

また、更に驚いたのは、この考えはEU全土にも広がり、【マイクロプラスチック】の制限や禁止に関する法案もすでに採択されていました。

日本も、オリンピックのために作られた「新国立競技場」が天然芝であることを自慢するだけではなく、ドイツを見習い【人工芝のマイクロプラスチック問題】にリアルに目を向けるべきではないでしょうか・・・。

とはいえ、この【海洋プラスティック】問題は、政府、企業、個人がいかに思いを持って

取り組めるかがテーマとなる環境問題です。

そのためにも先ずは様々な現状を認識し、個人でもできること、例えば、ゴミのポイ捨てはしないとか、ゴミの分別を忘れないとか、とにかく陸から海にプラスティックが流出しないために、どうするべきなのかを、考え取り組み、今後も提案、そして発信したいと考えています。

テック産業アナリスト のと裕行でした。
ありがとうございました。

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