金融 DX(フィンテック)×新たな基軸通貨(法定通貨)=中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行
テック産業アナリスト-のと裕行のライフイノベーションコラム-104

コラム

デジタル円が動き出した

日銀がデジタル円の発行に向けて実証実験

私は、これまでのコラムで「フィンテック」をテーマにデジタル通貨に関する情報と未来予測をして来ました。
特に 2019 年に Facebook(現在は Meta)がリブラ通貨の構想を発表した ことによる金融の DX や、ブロックチェーン技術の件、そして、それらにともなう世界の中央銀行のデジタル通貨化、CBDC のスピードアップは、目を見張るものがありました。そして、いよいよ日本の日銀も 2023 年から CBDC の実証実験を行うと、2022 年 11 月 23 日 に報道されました。

具体的には、国内の 3 つのメガバンク(銀行名は発表されてませんがおそらく三菱UFJ・ 三井住友・みずほ)と
地方銀行の協力により、入出金に関する問題や災害時などインターネ ットにアクセス出来ない地域でも運用が可能かなど「デジタル円」の環境を開発し、発行、 流通、換金といった基本的な機能の検討を始し、2026 年に発行の判断を下す予定だとい うことです。

また、この背景には中国の既に実証実験中である「デジタル人民元」を活用した、今年2 月 の北京オリンピックでの外国人向けに発行した「プリペイドカード方式のデジタル人民元」 の大々的な世界へのアピール。
今年 1 月に欧州中央銀行(ECB)が「デジタルユーロ」を 2026 年に発行する可能性のにおわせ。
そして、コロナ禍とロシアのウクライナ侵攻による対露制裁として行われたドル決済禁止により、国際銀行間通信協会(SWIFT)による銀行排除の威力が発揮されたことに、中国が危機感を強め「CBDC の国際決済の枠組み作りを加速する 必要がある」と世界に発信したことなどによります。

しかし、肝心のアメリカは、バイデン大統領が今年 3 月に「デジタルドル」導入に向けて舵取りをしたにもかかわらず、ハッキングのリスクや全ての履歴が残るため中央銀行が個人や企業の決済情報をどこまで管理すべきかなどの議論もあって、米連邦準備理事会(FRB)は 導入の最終判断を下していません。 とはいえ、もし中国主導でSWIFTを通さずに安価でスピーディーなデジタル決済が可能になれば、世界の基軸通貨であるドルの地位が脅かされる可能性もあり、多額のドルを保有する日本にとっても脅威となる可能性を秘めています。

CBDC(中央銀行デジタル通貨)とは何ですか?

改めて中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)を開設すると、先 ずは下記の 3 つを満たすものだと日銀は発表しています。
1 デジタル化されていること
2 円などの法定通貨建てであること
3 中央銀行の債務として発行されること

そして現在、中央銀行は、誰でも 1 年 365 日、1 日 24 時間使える支払決済手段として銀行券を発行していますが、これをデジタル化出来るのかが大きなポイントと言えます。
※日銀ホームペ―ジ参照 https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/money/c28.htm/

また、分散型の「仮想通貨」とは異なり、発行主体として国や地域が存在し、デジタル化さ れた法定通貨であり、法に基づき統治管理されるのが CBDC です。そして、実現に向けて ブロックチェーンが必須ではありませんが、このブロックチェーン技術の進歩が実現に向けてのカギであることは間違いありません

日銀は、2020 年 1 月 21 日、イングランド銀行・カナダ銀行・欧州中央銀行・スウェーデン リスクバンク・スイス国民銀行・国際決済銀行と CBDC 実現のためのグループを設立し、 今回の実証実験に至っています。
このグループの共同研究の発表によるとデジタル通貨の基本原則は、下記の 3 点です。

1 通貨・金融の安定を損なわない
2 公的・民間マネーとの共存・補完
3 イノベーションと効率性の促進

最後に CBDC のメリットは下記の 3 点です。

1 経済全体のコスト低下
2 マネーロンダリングの防止
3 金融包摂の推進

私たちはCBDCとどうかかわるべきなのか

今、世界の 9 割の国が CBDC の検討、検証が進められています。 しかし、日本においてデジタル通貨が本当に必要なのかを考えると、私は国内では半々の考えです。もちろん、企業の状況や家庭環境にもよりますが、現状の電子決済システムがあれば必要ない方も多くいらっしゃると思います。 とはいえ、国際化による国際標準や米国との関係性を考えると日本も取り組むべきだと思いますが、やはり官民一体の連携と政治主導、そしてそれらを理解するための義務教育によるエドテックの実現が必要です。

また、金融業界の DX化の遅れを考えると、ハッキングなどの脅威も否めず、先ずは少額の個人ユースからデジタル通貨を活用する仕組みが日本には合ってるのではないでしょうか。
最後に、本来デジタル通貨の考え方は、銀行を間に入れる必要がなくショートカットが可能なシステムであることを私たちは認識すべきです。しかし、日銀の発表では、3つのメガバ ンクを中心に実証実験を行います。ある意味では銀行を介入させるためにどうするべきかを検討する準備期間と考えるのは私だけかもしれませんが、それ以上に、ブロックチェーン 技術を持つ企業に勤める私としては、日本の未来にどうすれば貢献出来るのかと、思いを馳 せています。

テック産業アナリスト のと裕行でした。 
ありがとうございました。

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