テック産業アナリスト・のと裕行のライフイノベーションコラム#1
ノット1『Facebookのlibra(リブラ)通貨でお金はどう変わる?①』

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2020年1月23日

Facebookが昨年6月に発表した「リブラ通貨」計画により、世界の政治経済は「金融革新」に向けて大きく動き始めました。そして、もっとも衝撃だったのは同年10月に中国が発表したデジタル人民元の発行計画で、既に計画中のスウェーデン、ウルグアイ、バハマだけでなく、G7・G20では一斉に規制強化で足並みをそろえ、その他各国の中央銀行や政府も揺れ動いています。また、この動きに民間企業(テック産業)では、ブロックチェーン技術など次世代の「技術革新」が始まりました。

そこで、私たちは今後、「通貨」とどう付き合うべきなのか、そして「リブラ通貨」はどうなるのか?「Facebookの本当の狙い」を改めて考え3回に分けてコラムにしたいと思います。

通貨ってなに?

日銀は2020年1月21日、欧州中央銀行(EBC)、イングランド銀行、スウェーデン中銀のリクスバンク、スイス国民銀行、カナダ銀行の6つの中央銀行と国際決済銀行(BIS)が「中央銀行によるデジタル通貨(CBDC)の活用可能性を評価するためのグループ」という通貨発行も目的とした新たな組織を立ち上げ、“通貨(お金)”に関係する話題が、またトップニュースになりました。

そして、世間ではMMT(現代貨幣理論)などの経済論が常に注目を集め、私たちの生活経済の“主人公が通貨”なんだと日々実感します。そして、コラムの第一弾に選んだテーマ「リブラ通貨」を知ることは、その“通貨という主人公(ヒーロー)”の真の姿を知るカギとなります。果たして“通貨”は、私たちの真のヒーローなのか、市民を欺くダークヒーローなのか。そして、突如現れた「リブラ」は、私たちの味方なのか、それとも生活を脅かす悪の手先なのか、皆さんと一緒にノットイナフを見つけながら、その正体を暴いてみましょう。

では、先ずは皆さんに質問させてください。

  • 「あなたは、全財産いくら持っていて、そしてそれを証明出来ますか?」と聞かれたら、あなたはどうやって証明しますか?

普通の人は、たぶん銀行の預金通帳の残高を見せて証明するのが一般的でしょう。しかし、ここでよく考えてみて下さい。あなたは本当にその通帳を、お金を預けた銀行を信じていいのでしょうか?実際に、現金を見て確認される方はごく少数です。いつのまにか私たちは、現金という現れるお金ではなく、現れないお金である通帳に記載された数字を見て、通貨証明をするようになりました。つまり銀行は私たちの味方だと、いつのまにか信用してしまったのです。

ここで皆さん、大事なことを忘れていませんか?預金保険法のことを。1971年から施行されたこの法律は、もし銀行が倒産した場合、一銀行あたり預金の保証額は1000万円とその利息になりました。もしも、3000万円預金していたら、2000万円は保証されないんです。他にも忘れていませんか?一番は何と言っても手数料です。もう当たり前になって疑うことすらありませんが、預金からお金を出したり、振り込んだり、お金を借りた金利や、家や車をローンで買った時の金利などなど、切りなく手数料を私たちは払い続けています。この当たり前は、これからもずっと信用していいのでしょうか?

また通貨は、時代とともにこれほど変化するものはありません。私たちは、それらも当たり前のように、疑問すら持たず受け入れて来ました。せっかくなので、改めて日本の貨幣(法定通貨)の「千円札」を参考にしてみましょう。分かりやすく1945年終戦から発行された表面の人物で変化を懐かしみ楽しみましょう。

日本武尊(1945年8月17日発行)→聖徳太子(1950年1月7日発行)→伊藤博文(1963年11月1日)→夏目漱石(1984年11月1日発行)→野口英世(2004年11月1日)→北里柴三郎(2024年発行予定)と、数年数十年でこんなにも変化しています。もちろんこれには、偽造防止だったりさまざまな理由はありました。しかし、本当にそれだけでしょうか?国の歴史や政治的な背景が潜んでるようにも思ってしまいます。

貨幣価値は、どうでしょうか?こちらもたった数十年で、大きく変化しています。「戦前の10円」と「現在の10円」の価値基準は何十倍何百倍も違うのです。当然、こちらも時代の変化や政治的な中央銀行の施策などありますが、やはり国民の知らない何かが姿を変え潜んでるように感じるのは私だけでしょうか。

時代の変化といえば、通貨はある時、別の姿としても出現すようになりました。いわゆる異なる通貨間市場(外国為替市場)により生まれた為替レートとなり、金融商品です。それもいつの間にか日々呼び名も変わり、ある時は「円高」とか、ある日は「円安」とか、不思議なことに“通貨(ヒーロー)”の価値という変化にも、何の疑いも持たなくなりました。

近年では、2008年「サトシ・ナカモト」の名前で発表された論文に基づき2009年に運用が開始された「ビットコイン」(暗号通貨)は、ブロックチェーンという新たなシステムを活用した“新たな通貨”です。しかし、まだまだ取引所のトラブルや発行所が固定されないため採掘の可能性もあり、信用性が低いイメージがありますが、大きなビジネスチャンスを秘めた可能性もあり、本当の活躍はまだまだこれからです。

最近では、更に姿を変え、クレジットカードやSuica・ICOCAなど電子マネー、ペイペイやLINEPAY等も同様です。

何か悪いイメージばかり植え付けてしまいましたが、“通貨がヒーロー”として活躍する姿も歴史の中で多くありました。私はその活躍に感謝をしています。人類は“通貨の価値基準”によりさまざまな出来事のバランスを取って来ました。そう“通貨は取引”を生み、国や人種の争いごとの中に入り、時には人の心のよりどころとなり、多くの難題を解決してきたのです。歴史を見ても戦争を解決する一番の方法が取引だということをご存知ですか?そこには“通貨(ヒーロー)という価値基準”が存在するからなんです。

日本でも幕末維新のきっかけとなった薩長同盟も坂本龍馬がお互いの国の価値基準を認めさせ、取引で同盟が生まれ時代が動きました。

少し余談ですが、日本人はお金儲けに対して、良くないことだと考える「顕著バイアス」という心理が働くそうですが、グローバルスタンダードは、この価値基準の封印を解くことかもしれません。

話を戻しますが、つまり“通貨”は、人類が生きていくために必要不可欠な存在なんです。では、私たちと通貨の関係は、何なんでしょう?日本人なんで、「円」で考えてみましょう。皆さんは、「日本の円」をどう思いますか?好きですか?突然聞かれると悩んでしまいますよね。では、質問を変えて、「中国の元」は好きですか?私の個人的な意見は、正直言うと「元」は、あまり好きではありません(笑)何故なら、価値基準が低いし、突然使えなくなる可能性もあるから信用できません。しかし「円」は好きです。だって日本人だから・・・。だいたい皆さんも同じ意見ではありませんか?

さて、気付かれた方もいると思いますが、私たち日本人は「円」のことが好きで「信用」しています。それぞれの国で同じ質問をすると多くの国の人は自国を、自国の“通貨を信用”(政局が不安定で信用のない国ももちろんあります)しています。そうです。通貨は、「信用」で成り立っています。そして私たちは、この「信用」を買っているのです。国と取引しているのです。手数料を払うのも、この「信用」です。もう少し紐解けば、「税金という国の最大の手数料」を“自国の通貨”で支払うことが義務付けられているからです。つまり“通貨”と私たちの関係は、“取引から生まれた「信頼関係」”なのです。そして、いつしか私たちは、政府、銀行、企業、様々な機関や協会等のそれぞれの信用取引の中で、信用通貨という主人公(ヒーロー)を選んだのです。

しかし皆さん、ここで改めて問います。「本当にあなたが選んだ通貨(ヒーロー)を信用していいのでしょうか?」。「信用」を辞書で引くと「現在の行為からしても将来も間違いを起こさないこと、信頼すること」の意味ですが、本当に将来も間違いを起こさないと断言できますか?でも私たちは、無意識に日本の政府が発行する通貨を「信用(トラスト)」していたのです。そして、この無意識な感情は、心理学で考えても、大きな変化や衝撃がない限り変わることはありません。それが“通貨”の正体です。

しかし、その概念や歴史、“通貨(ヒーロー)の姿”、全てを覆そうとするのが、Facebookの「リブラ通貨」なんです。なんと、今まで守られ築かれた信用(トラスト)の壁が崩壊するかもしれないのです。

テック産業アナリスト のと裕行でした。
ありがとうございました。

【次回へ続く】

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