テック産業アナリスト-のと裕行のライフイノベーションコラム-34
グローバル(Global)×テック(Technology)= グローバルテック③スーパーシティ構想からグローバルスタンダードへ

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2020年9月19日

「デジタル庁」という日本の目

2020年9月16日、衆議院本会議にて自民党の菅義偉総裁が第99代内閣総理大臣に指名されました。そして早速、目玉政策の1つとして「デジタル庁」の創設が掲げられ、話題を集めています。

この行政のデジタル化推進を担当する同じく目玉閣僚の1人、平井卓也デジタル改革担当大臣の記者会見によると、2021年秋には新設する方針で、各省庁にある関連組織だけでなく、バラバラであるシステムの調達やデータ仕様も一元化されるそうで、菅新首相が総裁選の際に唱えた『役所の縦割り、既得権益、あしき前例主義を打破する』政策を「デジタル庁」を司令塔として強力な体制作りが狙いのようです。

とはいえ、平井大臣が『幸せが感じられる社会をデジタルで作る』と強調されたように、コロナ禍で露見してしまった10万円の特別定額給付金で生じた地方自治体との異なるデータシステム混乱のような、デジタル化の遅れをスピーディーに解消して、新たな未来社会へと日本を進めて欲しいものです。

国連が公表する電子政府進捗ランキングで、日本は世界14位です。

ちなみにデジタル化がアジアで最も進む世界2位の韓国では、20年ほど前から行政のデジタル化に取り組んでいて、韓国版デジタル庁といえる政府機関「情報化振興院」が様々なデジタル事業に取り組んでいます。

例えば、定額給付金にあたる「緊急災害支援金」の支給では、スマートフォンやパソコンから名前・電話番号・住民登録番号などの入力するだけで、翌日に入金されたそうです。

また、引越しの際に自宅から政府のポータルサイトで転入手続きをすると同時に運転免許証や健康保険証、学生であれば転学手続きが一度に出来るシステムが構築されていて、デジタル化の便利さが分かります。

日本でもすでに着手されてるマイナンバーカードが、健康保険証になったり、国立大学の学生証、運転免許証などと一緒になっていく計画ですが、今後は単に統合され、行政サービスが簡素化するだけでなく、私たちの生活に便利なデジタル化を目指して欲しいと思います。

それから今話題の「ドコモ口座」の不正な預金引き出しや個人情報問題、サイバー攻撃などデジタル化におけるリスクにも備えることもデジタル化の大きなテーマだと思っていますが、スピードだけではなく丁寧なリスクマネジメント対策をお願いしたいです。

特に個人情報においては、統合先が勝手にデータを利用出来ないように見守る【監視システム】が必要だと思います。

また、何が目的で何のための取り組みなのかが見えるようにする【情報のオープン化】や、米国議会のようにデジタル化の進捗状況をチェックする【評価システム】、民間からの人材の登用を目的とした【人材育成システム】など、行政における菅新首相の目となり、日本の未来を見据える目であ

り、しいては国民が目を見張るグローバルで新たな目玉プロジェクトであって欲しいものです。

今回のコラムは、デジタル化の先にある未来都市計画「スーパーシティ」についてお話します。

スーパーシティという地方創生

5月27日、AIやビッグデータなどの先端技術を活用した未来都市構想プロジェクト、【スーパーシティ法案】が参院本会議で可決されました。

この法案は、物流・医療・教育など様々な分野のテクノロジーを組合せ、その相乗効果により、住みやすい街づくりを目指すという「まるごと未来都市」がコンセプトです。

そして既に実証実験として、2025年の「大阪・関西万博」の会場で、空飛ぶ車やドローンなどの活用が検討され、2030年頃の実装を目標にしています。

またこの【スーパーシティ構想】は、世界各国でも【スマートシティ】構想として動き出しています。

例えば、スペイン・バルセロナ市は、2000年からWi-Fiを都市のICT共通基盤として整備し、渋滞緩和や駐車場の空き情報をセンサーで検知し、市営の駐車場収入の増加やゴミの収集管理によるタイムリーなゴミの収集など、様々な生活に変革をもたらす実験を進めています。

中国・杭州市では、アリババ系列の会社と行政が連携し、交通状況や渋滞対策にカメラ映像によるAI分析を行い交通違反を警察に自動通報させる仕組みや、無人のコンビニエンスストアで、顔認証のみでキャッシュレス払いの実験も行いました。

他にも様々な国がプロジェクトを進めていますが、カナダのトロントのようにコロナや人権問題で断念した計画もあり、日本でもプライバシーなど不安視する声が多いのも事実です。

現在、先端的サービスとして挙げられている9つのジャンルは、

① 行政サービス

② 物流

③ 交通

④ 観光

⑤ 防災

⑥ 教育

⑦ 社会福祉

⑧ 金融・キャッシュレス

⑨ 環境保全

以上になります。

そして今後の課題は、これらのビッグデータを、いかに連携促進させ生活に取り入れるかです。とはいえ、中国ではコロナウイルス対応に、アリババが実験していたスマートシティの技術が実際に活用され、遠隔医療、遠隔教育、インターネット手続きに貢献したそうです。

日本でも政府の骨太方針であるデジタル化との連携と共に、今や当たり前となったテレワーク等のシステムがスーパーシティに組み込まれるとしたら、未来都市は快適な環境かもしれません。

そして、【地方創生】の一環でもあるこのプロジェクトは、日本統一の国家スタンダードというよりもローカルのこだわりが重要となります。

例えば【大阪スーパーシティ】というローカルスタンダードが【バルセロナ・スマートシティ】というローカルスタンダードと観光やビジネスで連携コラボレーションし、国と国ではなく、ローカルとローカルの結び付きが、【新たなグローバルスタンダード】を誕生させると私は思っています。

つまり、これからの【地方都市】は、今まで以上に「個性」や「セールスポイント」が必要となります。

しかしそこには、世界を巻き込んだグローバルなビジネスチャンスも存在するということです

テック産業アナリスト のと裕行でした。
ありがとうございました。

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