エコロジカル・フットプリント&生物多様性から見える日本の人口問題
テック産業アナリスト-のと裕行のライフイノベーションコラム-110

コラム

日本の人口は増えるべきか減るべきか

食の循環型社会を実現していた江戸時代の人口は 3000万人

みなさんは「三里四方の食によれば病知らず」ということわざをご存じですか?
三里(約 12 km)の範囲内の地域で採れた野菜を食べていれば、
健康で病気にならず長生きできるということわざです。

地域によっては食材の移動距離の問題で「五里四方」という場所もあったそうですが、
これは私が好きな「地産地消」の考え方です。
そして、このことわざが生まれたのは江戸時代です。
当時のコールドチェーン(冷凍、冷蔵によって生鮮食品を生産者から消費者へ運ぶしくみ)がなかった時代には、
歩いて3 時間ほどの距離範囲で採れた新鮮な野菜や魚介類を食べて生活していれば、健康で長寿でいられるという、鎖国政策で輸入もなく食の自給率が100%だった日本の江戸時代でしか考えられない環境循環型システムです。

つまり日本人は、自然環境に適し、生態系にも優しい理想的な暮らしを実現していたのです。
そして、この世界でも珍しい循環型社会を実践していた頃の日本の人口は 3000 万人でした。

2023年3月から4月にかけて私は中央アジアのキルギスとウズベキスタンを訪問しました。
特に、私が感じたキルギスとウズベキスタンの首都以外の都市には江戸時代の食生活が残っていました。
国の基幹産業である、農業とその広大な農場。
温野菜、季節のフルーツ、ドライフルーツ、ナッツ、チーズ、各種スープ、ミルクは無くてヨーグルトが豊富。
そして氷は殆ど使われない。冷蔵庫もない地域もあります。市場である巨大なバザールには新鮮な食材がいっぱい。シルクロードが繁栄した時代と、あまり変わってないのではと。
そして電力は水力発電が中心で、投資を積極的に行っています。
日本もある意味で、キルギス・ウクライナを見習わないといけないところもあるなあ、と感じました。
国民は愛らしく、人の気持ちを察して生きています。

エコロジカル・フットプリントで計算すると国土に適した人口は 5500 万人

エコロジカル・フットプリントとは、地球の環境容量をあらわす指標で、人間活動が環境に与える負荷を、資源の再生産および廃棄物の浄化に必要な面積として示した数値のことです。
人間が生活を維持する上で必要な一人当たりの陸地及び水域の面積が示されます。
また、人間が生態系を踏みつけた足跡という比喩からこのネーミングが付けられたそうです。

さて、WWF(世界自然保護基金)の「生きている地球レポート」を参考にすると、この指標により計算して地球一個分の面積から算出した地球の生態系に合う人口は、約 45 億人にな るそうです。ちなみにこの数字は、1980 年頃の世界人口と同じです。そして、一人当たりの人間が必要とする土地の面積は 164m×164mになります。

この指標を日本に当てはめて算出すると、一人当たりが必要な面積が 202m×202mとなり、 日本の生態系に合った人口は、約 5500 万人が一つの目安となるそうです。

イーロン・マスクが「日本は消滅する」と言及した日本の人口は現在、約 1 億 2550 万人

イーロン・マスク氏が 2022 年 5 月 7 日に、日本の厚生労働省が発表した人口動態統計で、
年間出生率が 1899 年の統計開始以来初めて80 万人を割り込み、それに対して「当たり前のことを言うようだが、出生率が死亡率を上回るような変化がない限り、日本はいずれ消滅 するだろう。
これは世界にとって大きな損失になる」とツイッターに投稿し話題になりました。そして、2023 年3 月1 日に再び、「日本では昨年、生まれた数の 2 倍の人が亡くなっ た。人口の急減だ」と投稿しました。
これを踏まえ、ここ最近の日本の政府のメイン政策は、給付など子どもたちに対する支援が多いです。
イーロン・マスク氏の投稿と関係するかどうかは分かりませんが、アメリカのワシントン大学が昨年発表したデータによると、日本だけでなく世界の人口も 2064 年の 97 億人をピークに減少するそうです。
しかし、経済視点から総人口を需要、労働力人口を供給と考えれば、2030 年代以降、世界経済における最大の人手不足の深刻化が進んでいます。

将来推計人口によると、2060 年の日本の人口は 8674 万人になる

果たして日本は、経済を優先するのか環境を優先するのか?
経済が停滞すれば、税収が減り国からのサービスも減少します。現実的には電気、水道、ガ ス、上下水道、鉄道や道路、公共サービスの現状維持は出来ません。とはいえ、パリ協定や SDGs など生態系に合った地球環境を優先するべきなのかは、悩ましい限りです。
また、昨年 12 月に COP15 で合意された新たな生物多様性の国際目標にも向き合い、世界 標準ではなく、地球標準を見定め、人類のターニングポイントとなる 2030 年が近づいています。
将来推計人口で日本の 2060 年の人口は 8674 万人と発表されましたが、私たちの子どもや子孫にとって進むべき道はどちらが本当に幸せなのでしょう。
今回、様々なデータを調べ個人的な見解は、日本は江戸時代に近い循環型社会の方が幸せなのかもと感じました。しかし、そのままとは思いません。
新たなテクノロジーと地産地消の融合こそが、世界の未来だと私は信じたいと思います。

テック産業アナリスト のと裕行でした。 
ありがとうございました。

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