テック産業アナリスト-のと裕行のライフイノベーションコラム-29
29号 エシカルテック×AI倫理 = 10年後のAIコミットメント富士通グループのエシカルテック

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2020年8月20日

甲子園から届いたコミットメント

2020年8月10日、甲子園高校野球交流試合が開幕しました。今年は新型コロナウイルスの感染防止のため開会式は開幕試合2校のみが参加し、バックスクリーンの大型ビジョンに32出場校の写真が映し出されるという特別な開会式でした。

そして、春夏の甲子園が中止という史上初の出来事の中で、大分商業の川瀬堅斗選手と花咲徳栄の井上朋也選手のキャプテン2人が【選手宣誓】を一緒に行いました。

偶然、その模様を見た私は、何故かこの【宣誓】にとても感動しました。

元々、甲子園に出場できる確率は約4000校から49校ですが、このコロナ禍で春夏とも中止になったことを考えると、延べ約8000校から32校の出場確率は、たったの0.4%から更に選ばれた奇跡の代表2人です。

毎日新聞のインタビューに川瀬選手は、「限られたチームしか甲子園に立てず、全国の球児が悔しい思いをしている。だから絶対に手を抜けない」と語り、23年振りのセンバツ出場が中止となりどん底に突き落とされた時も「1%でも可能性を信じろ」と部員たちを鼓舞してきたそうです。井上選手は、「口で言うだけではなく、行動で示す」と今までチームを引っ張ってきたけど本音は、「俺たちついてない世代だな」と同級生たちと笑って話し、なみだをこらえ割り切ったそうです。

そんな2人の【宣誓の言葉】は、はじめに大分商業の川瀬選手が、

「私たち高校球児は夢の舞台『甲子園』に立つことを目指し、仲間とともに励ましあいながら心・技・体を鍛えてきました。新型コロナウイルスとの戦いや、たび重なる大規模な豪雨災害からの復旧・復興など厳しく不安な状況下で生活している方もたくさんおられます。(中略)このような社会不安がある中で、再び希望を見出し、諦めずにここまで来ることができました」と述べ、続けて花咲徳栄の井上選手が、

「一人ひとりの努力が皆を救い、地域を救い、新しい日本を創ります。

『創造・挑戦・感動』。(中略)多くの皆様に明日への【勇気】と活力を与えられるよう、選ばれたチームとしての責任を胸に」と述べ、最後は2人で声を合わせて、

「最後まで戦い抜くことをここに誓います」と宣誓しました。

その瞬間、私は本当に救われた気がしました。【勇気】を頂きました。そして新しい日本は、テレビの前でもっともらしく語るコメンテーターや、日本に影響力がある政治家たちではなく、彼らや、彼らの仲間たちが、共に創っていくのだと感じました。

私たちは、人生の節目において【宣誓】しなければならない事が必ず訪れます。しかしそれには大きく『2つの瞬間』があります。何らかの行為をすべき時だと判断・選択・コントロールする【タイミング】と、想定外の中で突然または偶然訪れる【チャンス】です。

私は甲子園で【宣誓】する2人を観て、彼らは自身の人生だけでなく、日本までも巻き込み大事な【タイミング】を【チャンス】に変えてくれたんだと思います。

今回のコラムのタイトルである【コミットメント】の意味は、約束・公約・責任・宣誓です。

そして、企業や大人が【宣誓や約束】する時、最も大切なことは、関わる相手や周りの方々に【チャンス】や【勇気】を与えられることなんだと、2人に教えて頂きました。

直接、この言葉が2人に届くかどうかは分かりませんが、感謝の言葉を述べたいと思います。『川瀬くん、井上くん、私たちに【勇気】を与えてくれて心からありがとう・・・』

富士通グループのAIコミットメント

4週に渡り【エシカルテック】について話して参りましたが、想像以上に反響がありました。そこで今回は、その続編として私が勤務する富士通グループが昨年、発表したAI倫理に関する取り組み「AIコミットメントの制定」についてお話し致します。そして、その全5項目からなる内容は、マルチステークホルダーに対して、どのように倫理原則を満たすためのAIを提供するのかを【宣誓】したものです。

① AIによってお客さまと社会に価値を提供します

単に提供するだけではなく、お客さまと共創することでイノベーションを生み「継続的に発展するAI」の価値を持続的に提供し、更にはそれが社会貢献と繋がる考え方です。

② 人を中心に考えたAIを目指します

人に対して与益、beneficenceという善行であり、無危害、正義原則に対応するつまり、人が安心して使えるAIを目指します。

③ AIで持続可能な社会を目指します

地球環境を持続させるためにAIを活用し、富士通グループが国連が採択したSDGsの考え方でもあるサステナブル企業として社会貢献します。

④ 人の意思決定を尊重し支援するAIを目指します

人に対する自律原則に対し、AIの提案よりも人間が上位に来て、最終判断を人がすることです。

⑤ 企業の社会責任としてAIの透明性と説明責任を重視します

富士通のAIを信頼してもらうために、AIの透明性の確保、AIが判断した情報の提供とともに最適なシステム構築を目指します。

以上になりますが、

これらは富士通グループが、倫理・法律を含む人権、社会科学やAI技術を含む自然科学に関する高い見識のある専門家をお招きし、安心安全なAIの社会実装について話し合ったものです。

担当したスタッフによると、普段馴染みのない法学・医学・生態学といった観点と海外の動向からAIとそれを扱う人間の倫理を話し合う中で、AIという最先端技術は、まさしく私たち人間のあり方を問うことなんだと感じたそうです。

そして富士通では、AIに関わる人権やプライバシー、倫理に関する懸念や疑問の相談窓口として「『人間中心のAI』推進検討会」を設立しました。

手前みそですが、素晴らしい取り組みだと思います。

特に医学的なニュアンスやキーワードが多く含まれていて、AIは人に対して

「Medical technique(医術)」のような関係性という考え方は、まさしく技術動向や社会状況により随時、変化・進化するAIにふさわしい未来ビジョンです。

私は、更に10年後のSDGsのゴールとリンクさせ、富士通グループのような「つくる側の責任」というAI倫理とお客さまであり消費者でもある「AIをつかう側の責任」を合わせた【エシカル教育】の必要性を感じています。

そして、いつか近い未来において、この【エシカルテック】がスタンダードだと感じる世界が必ずやってくると信じ、ここに【宣誓】致します。

テック産業アナリスト のと裕行でした。
ありがとうございました。

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