テック産業アナリスト-のと裕行のライフイノベーションコラム-10
教育(Education)×テック(Technology)= エドテック(EdTech)② ~プログラミング教育はこどもたちの未来に向けたイノベーション~

コラムアーカイブ

2020年4月4日

 2020年3月24日、トヨタ自動車とNTTが共同記者会見を開き、次世代都市「スマートシティ」のプラットフォーム(都市基盤)作りを共同開発すると発表しました。この2000億円スケールの資本提携は、コラムでも何度か取り上げているデジタルトランスフォーメーション都市の実現化が、いよいよ日本でもスタートするということです。そしてこのプロジェクトは日本の企業の未来像を、トヨタ自動車が自ら示したもう一つの大事な側面があると私は思っています。

 それは24日の日経新聞の記事を一部引用すると、『トヨタはもともとKDDIの設立に関わった経緯があり、今でも大株主だ。ソフトバンクグループ(SBG)とは共同出資会社のモネ・テクノロジーズをつくり、新たな移動サービスを開発してる』とあり、つまり今回の提携で国内通信大手3社と組むことになったのです。もちろん目的も異なるレイヤー(層)で組んではいますが、トヨタ自動車のこのコラボレーションは、新たな日本連合の世界発信ではないでしょうか。現にNTTの澤田社長は、今回の狙いを「GAFA対抗だ」と言い切られ、豊田社長は、「民間会社が決起して日本を背負うことが必要だ。世界における日本の存在感を高める」と語られていました。なんかグローバル感があってカッコイイですね!

 グローバルと言えば、世界の投資家が注目し、日本では環境省が取り組みを始めた「ESG投資」がありますが、その評価を判断する『世界サステナブル企業ランキング100』(トヨタ自動車は92位、日本は6社がランクイン)があるのをご存知ですか?実は、この考え方こそが今後の企業評価を判断する世界基準(グローバルスタンダード)だと言われています。そして、その評価で最も重要視されているのが「イノベーション力(企業の変革力)」です。

 イノベーションというと日本では一般的に、「技術革新」と訳されることが多いですが、世界ではもっと意味深く、「新しいアイデアや手法や技術によって、新機軸、新結合を導き、世界に大きな変化をもたらす」というニュアンスで訳されます。普段何となく使っていますが、「イノベーション力」がグローバルスタンダードなのも分かる気がします。

 心理学によると、人は本来変化を恐れ、心地良い現状層(コンフォートゾーン)を守ろうとする性質があるそうです。しかし、成長しもう一つ上のレイヤー(層)に上がるには、変化とチャレンジという学びの層(ラーニングゾーン)にイノベーションしなくてはいけないそうです。

 今みたいに世の中が「大変」な時こそ「大きく変わる」チャンスと捉え、豊田社長、澤田社長を見習い学び、世界に発信することが、本当の「イノベーション力」なのかもしれません。

今回は、教育イノベーション【エドテック】から【プログラミング教育】についてお話します。

学びのポイントはプログラミング的思考

ついに、2020年4月から小学校の授業で必修科目となった【プログラミング教育】が始まります。とはいえ、【プログラミング教育】という教科が出来るのではなく、実際は今までの授業の中で、パソコンが活用される授業のことを言います。

例えば、算数で図形を学ぶ際、パソコンを使って線や図形を描いたり、理科で実験をしたり、プログラミングで音楽を作ったり、家庭科では家電に組み込まれているプログラムを考えたりします。

もちろん、「総合的な学習の時間」で、実際にプログラミング体験したり、情報リテラシーを学んだり、学校によってはパソコンクラブが設置される予定です。

そして、この【プログラミング教育】のもう一つのポイントは、「プログラミング的思考」を養う教育です。ある目的を達成するために与えられた情報を整理し、それらを順序立てて考え、試行錯誤させ、「物事を解決する力」を養います。パソコンのスキルアップだけが目的ではありません。

私的には、現場の学校や先生の負担が多く、心配もありますが、それ以上に、こどもたちの将来が楽しみです。

なんか凄いコラボレーション「みらプロ」

 そして、この【プログラミング教育】と連動した様々なプロジェクトも始動しています。

その中から注目の2つを紹介します。

先ずは、【GIGAスクール構想】(Global&Innovation Gateway for Allの略で、容量のギガではありません)です。これは、安倍総理の鶴の一声で実施が決まったという話もありますが、私はアメリカの元大統領オバマさんが、2016年に経済の回復戦略として、教育テクノロジーに投資した政策を参考にされたのではないかと思っています。

そしてなんと、2022年までに小中学生の、誰一人取り残すことなくパソコンを支給し、各学校には高速大容量の通信ネットワーク環境整備と共に、良質なデジタルコンテンツも提供する教育ICT環境を実現するプロジェクトです。

ちなみに文科省が推奨するOSは、マイクロソフトのWindows・GoogleのChromebook・アップルのiPadOSの3種類です。

 余談ですが、最近「Chromeブック」のコマーシャルよく見ませんか?きっとこの辺りを意識しての広報戦略ではないかと思っています。

もう一つは、文科省、総務省、経産省と民間企業が連携し、【プログラミング教育】のサポートをする【未来の学び プログラミング教育(通称:みらプロ)】です。

2月19日のニュースで、「ポケモンでプログラミング教育」という記事が話題になりましたが、この「株式会社ポケモン」が新たに参入した「みらプロ」は、プログラミング体験だけではなく、講師派遣、教材提供、企業訪問のサポートを行います。この人や企業というリアルな社会との接点をこどもたちに提供する「みらプロ」は、新たな人材育成をする教育プログラムだと私は思っています。

実は、日本は、世界からICT教育の後進国と言われています。デジタル化が進み、社会に対応する情報教育を、家庭任せにしてはいけません。生まれた家庭環境や地域によって大きな差が出ますし、初等教育から進めるのが世界の常識です。

ですから、私はこの政治的判断、政策をとても評価しています。ある意味やっとなのかもしれませんが、これで日本も世界へ向けたデジタル戦略のスタートラインに立ったのです。たかだか小学校にコンピューター入れたぐらいで、【プログラミング教育】始めたぐらいで、なんて思わないでください。わたしたち大人も【プログラミング教育思考】を持って持続可能な取り組みをしていきましょう。

では皆さんに、こどもたちのための【教育的イノベーション思考】という3つのご提案をします。先ずは、身近にいる未来のこどもたちを【信じる思考】に切り換えてください。そして次に、こどもたちの【失敗を失敗だと思わない思考】に切り換えてください。大人になると失敗を悪いことだと思ってる人が多く、その感情をこどもたちに押し付ける思考になってしまうのです。失敗は大きな学びです。失敗したから成長するのです。それを忘れないでください。次に、こどもたちが興味を持った些細なことを見逃さずに、【ともに興味を持って学ぶ思考】に切り換えてください。こどもたちの自信は大人の共感から生まれます。自信は、自分を信じると書きますが、こどもの頃は自分のことがよく分かりません。大人が信じてあげましょう。信頼を経験しないこどもたちは、自分も他人も信じられず自信が持てず、自信がよく分からない思考になってしまうそうです。

大人は勝手に自分のレイヤー(層)の世界が正しいと思い、いざ自分が新たなレイヤー(層)に行く時は悩んだり苦しんだりします。しかし、0から1の言語を【プログラミングする思考】は創造力というアイデアを生むイノベーションな思考なのです。

いかがですか?3つの思考。興味を持たれた方は、今日からプログラミングしてください。さあ、スタートです。次回は、見直されるイーラーニングや海外のエドテックついてお話します。

テック産業アナリスト のと裕行でした。
ありがとうございました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました