テック産業アナリスト-のと裕行のライフイノベーションコラム-28
28号 エシカル(Ethical)×テック(Technology)= エシカルテック④スペンド・シフトというイノベーション

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2020年8月8日

2020年8月3日の日経新聞朝刊一面記事に「自治体システム仕様統一 〜政府検討 来年、デジタル化へ新法〜」という記事が掲載されました。内容は「政府は住民記録や税・社会保険などを管理する自治体のシステムについて、標準仕様への統一を義務付ける新法を制定する検討に入った。これまで各自治体が独自仕様のシステムを構築してきたので国や自治体のデータ連携が進まず、新型コロナウィルス対応では給付金の支給おくれなどを招いた。行政のデジタル化を急ぐため、来年の通常国会への提出を目指す。」です。

私は、今までに大阪市や堺市、東大阪市のシステム構築に関わってきました。だからこそ思うのですが、全国約1800ある自治体が、それぞれ委託事務を遂行することでバラバラな高価なシステム開発を行っていました。しかしこれで、大きな無駄を解消出来るのです。この統一化は待ちに待ったという感じです。

かつて自治体のシステム構築・納入は図書館の蔵書管理システムから始まり住民情報へと広がってきました。時節にあったシステムを全国の自治体が革新的なシステムと住民サービスを競い合った良き時代でした。

住民基本台帳システム・男女共同参画センターシステムや保健所の犬の戸籍システム等、様々なシステム開発に関わらせてていただきました。それはもちろん企業の営業的立場からは大変ありがたいことですが、コロナ禍となったこれからのニューノーマルは、それだけでは住民の皆さんや自治体、私たち企業にとっても良き時代とは言えません。

自治体業務は皆さんの税金からの委託業務です。そして、仕様統一へ新法が準備されている今、それは日本の国のためになる業務です。標準化を進めるのは霞ヶ関主導となります。しかし私は、東京圏の自治体モデルを全国統一するのではなく、地方やそれぞれの自治体、しいては【全ての国民の皆さんにとって良いシステム】でなければならないと思っています。

厚労省が推進している国保標準システム等も同様です。とはいえ、これらのシステムの標準化、仕様統一によるシステム構築費および運用費のコストダウン、対応する職員の人的工数削減の意義は大きいです。

出来れば、この取り組みで生み出される余剰資金や人的財産を、各々の自治体らしい政策・特色を知恵を絞って活気ある、競争力あるIT街づくり、デジタルトランスフォーメーション都市を目指す資金・職員に充当していただけることを期待します。

スペンドシフト、希望をもたらす消費とは

皆さんは、『スペンドシフト~希望をもたらす消費~』というベストセラーをご存知ですか?

2011年に発売され、消費者の購買力の動向の変化を示し、アメリカの消費指針となり、

日本でもブームになりました。「購買力」という希少な行為を、「投票権」のように意識して使い、消費が社会に希望をもたらし、人の絆を強め、モノやサービスの支援になるという考え方です。

この考え方は、今こそ日本の教育に必要だと感じます。例えば子どもたちにお金の使い方を教えるのに、「投票」や「応援」する意識を持たせたらどうでしょう。何をどこから選び、何故その商品に決めたのか、本当に必要なのか、どうして応援するのか。消費に理由、倫理を持たせる、まさに【エシカル教育】です。

デジタルというキャッシュレス時代に子どもたちは、課金というマジックに、現実が見えなくなることもあります。その消費は、自分を応援する投資なのか?ゲームを応援するのか?ストレス発散なのか?しかし、頭の中で【エシカルなブレーンストーミング】が出来れば、自分を見つけにくい時代に、自分を発見するキッカケにもなるハズです。デジタルというデータ分析と個人が持つ感性の違いをAIで判断してはいけないのです。

また【スペンドシフト】という消費の変化は、都市の発展や開発にも繋がっています。

皆さんは、都市のイノベーションはどこから来ると思いますか?もちろんインフラによる社会基盤も大事ですが、1番は、その都市における消費のムーブメントだと私は思います

ケニアのデジタルトランスフォーメーション

例えばアフリカのケニアに、通称「シリコンサバンナ」といわれる「コンザテクノシティ」という街があります。ケニアというと、広大なサバンナが広がる野生の王国といったイメージですが、ここ10年で情報通信産業が急速に発展し、ネットの普及率約80%、携帯電話の保有率は、なんと100%です。

この流れは、先ず携帯電話がケニアでブームとなり、更にはそれに伴う様々な消費が生まれ、インフラへの投資が始まり、流通が活性化し、日本や中国がケニアに投資を始め、携帯電話による電子マネーがブームとなり、ケニア経済が発展し、GDPが上昇し、都市がイノベーションしたのです。

私たちは、今以上の更なる発展に目を向ける時、常に【外部】との関係から答えを求めます。しかしそれは2次的な考えです。普段の生活でも、答えが身近にあったりするように、【イノベーション】は【内部】の動向や変化に気づけるかがポイントです。そしてサバンナでは「携帯電話を経由した電子マネー」がブームのスタートでした。けしてテクノロジーの進化ではなく「電子マネーブーム」を消費者が【応援】したからです。その渦に気づけるかどうか、それが答えです。

テック産業アナリスト のと裕行でした。
ありがとうございました。

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