テック産業アナリスト-のと裕行のライフイノベーションコラム-35
35号ブロックチェーン(blockchain)×通貨テック=デジタル通貨の未来リブラ通貨のその後は?そして日本は?

コラムアーカイブ

2020年9月26日

テレワークというニューノーマル

2020年9月25日、日経電子版の記事に『政府は2021年度から、テレワークで東京の仕事を続けつつ地方に移住した人に最大100万円を交付する。地方でIT(情報技術)関連の事業を立ち上げた場合は最大300万円とする』という記事が掲載され、より都市型ビジネスや地方創生という政府や企業のアクションプランに「テレワーク」の重要性を感じました。

しかし数か月前、働き方改革の代名詞だった「テレワーク」は、今や新型コロナウイルスの感染拡大により、企業にとって最もスタンダードで、ニューノーマルとなりました。

もちろん、私が勤務する富士通グループでも「テレワーク」はフル活用され、経営方針として、業務の75%を「テレワーク」でこなそうという目標が立てられたほどです。

その中心に据えた内需展開は、働くオフィスもコロナ以前の三分の一の面積に事務所設計が施行され、不要な不動産経費をカットし、電車・バスの出勤定期券も停止、逆に自転車通勤が可能となりつつあります。

また、今まで単身赴任していた者を家族の住む家へ帰し「テレワーク」で働けないかも検討が進んでいます。これらが実現すれば、大幅な経費の削減が見込めます。

そして、「テレワーク」によるニューノーマルは、通勤時間が不要となりました。つまり通勤準備時間を含めて1日平均二時間くらいはプライベートの時間に余裕が出たと思います。

しかし、デメリットかどうかは人にもよりますが、人と人とのコミュニケーションの時間が激減したことで、電話や電話会議では必要最小限の重要事項しか確認をとり合わないことが多いです。クライアントの方々や仲間がどのように感じ、どんな感想を抱いているのかは対面でないと伝わりにくいものです。後輩に物事を教えたり、OJTトレーニングも難しくなっています。

また、帰宅時のちょっといっぱいの飲みニケーションも激減し、サラリーマンの情報交換の時間、気晴らし、ストレス発散といった機会がなくなってしまいました。

飲食店の売り上げ減少も大きなデメリットの一つでしょう。

とはいえ、新たに向かえたニューノーマルにとって、間違いなく「テレワーク」は浸透拡大し、時間と場所に囚われないビジネススタイルが確立されていきます。

それはある意味、欧米型のビジネススタイルに近づき、日本的な「グループやチームでの成果」ではなく、個人個人が有用な役割を担い「メンバー全員がリーダーシップによる貢献」の時代へ変わるでしょう。

つまり「テレワーク」を中心に据えた経営者の考えは、日本的な結果よりも過程を評価するのではなく、個人の個性を尊重しプライベートを守った中で、過程よりも成果を大切にする『グローバルスタンダード』な経営方針です。

『リブラ通貨』というグローバル経営ビジョン

今年の1月からスタートしたこのイノベーション・コラムですが、第一回目のテーマは【通貨テック】と題して、Facebookの【リブラ通貨】を取り上げました。

今回は、その時コラムで予想した3つのテーマの途中経過と、2020年8月31日、日本の金融庁が発表した【金融行政方針】も踏まえながら、日本の通貨の未来についてお話したいと思います。

先ず1つ目の予想の【リブラ通貨】をキッカケに『デジタル化が加速する』とお伝えした件ですが、これは予想通りでした。

但し、新型コロナウイルスの影響により、政府の骨太方針にデジタル化が組み込まれたり菅首相の来年に向けた【デジタル庁】の政策などを考えると、スピードの速さは予想以上でした。

2つ目の【世界通貨戦争】が始まるとマークザッカーバーグ氏に向けてメッセージした件は、

現実的には半々です。確かに通貨という経済戦争が水面下で動き出しましたが、世界大戦というよりは、【アメリカvs中国という2極化の戦争】が始まりました。

ちなみに現状中国は、昨年6月、リブラ協会が発表した『デジタル通貨リブラ構想』に似たプロジェクトを、5月21日の「全国政治協商会議」で提案しています。

その内容のポイントは、「アジア4大通貨」を連動したリブラ同様の「ステーブルコイン」です。

そして、その構想の4大通貨は、「人民元」「香港ドル」「韓国ウォン」と「日本円」です。

では、日本の金融庁が発表した金融に関する方向性と重点課題は以下の3つになります。

① コロナと戦い、コロナ後の新しい社会を築く

② 高い機能を有した魅力ある金融資本市場を築く

③ 金融庁の改革を進める

この方向性のポイントは2点で、1つはコロナ後の金融サービスの向上のための【ブロックチェーン技術の構築】、もう一つは【仮想通貨・ステーブルコイン】において新たな基準、ルールを作り、日本が世界の主導する役割を果たしたいと述べたことです。

つまり、日本は中国の傘下ではないというビジョンです。

話を戻して3つ目の予想は、【リブラ協会】は、通貨に対する思惑と同等もしくはそれ以上に、【リブラブロックチェーン】を広めたいと考えているですが、これは予想通りでした。

さて、そして【リブラ協会】の現状は、世界の規制当局から浴びた大批判に対して歩み寄る大きな『方針転換』をしていました。

例えば、当初の世界共通『グローバルデジタル通貨』というアイデアを止め、異なる法定通貨に裏付けられた複数の【ステーブルコイン】の開発を進めていました。

つまり各国の法定通貨と競合させる訳ではなく、法定通貨の不十分なところを補完する新たな【ステーブルコインのリブラ通貨】を作る考えです。

そして、そのリリース文章のプランとして挙げられた4つの通貨は、「米ドル」「ユーロ」「英ポンド」「シンガポールドル」です。

「日本円」はありません。

そして、様々な規制に関する譲歩はありましたが、【ブロックチェーン】に関するこだわりはそのままでした。以前、「ペイパル」が「ベンモ」を買収しましたが、結果、相互性が取れず「ペイパル」から「ベンモ」へ送金は出来ませんでした。

しかし【リブラブロックチェーン】はそれを可能にする考え方です。

そして現在、心配するのは、『方向転換』した【リブラ】よりも当初、世界の規制当局が恐れたシステムを今、中国が進めようとしていることです。

日本は今、米中の間である意味バランスを取るような立ち位置になっています。

ですから、金融施策においても各国に左右されず、骨太でブレない日本を作ることが世界経済への貢献に繋がると私は思います

テック産業アナリスト のと裕行でした。
ありがとうございました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました