テック産業アナリスト-のと裕行のライフイノベーションコラム-68
68号 ウォーター(Water)×テクノロジー(Technology)=ウォーターテック(WaterTech) 海水を淡水化するテクノロジー

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2021年5月22日

先月【エコテック】として
「水セキュリティ」に関するお話をさせて頂きましたが、
今回はその続編として【水問題を解消】するテクノロジーを紹介します。

世界経済フォーラムで
【世界の水不足の危機】に関する現状が発表され、
なんと、世界人口の約40%がその危機に直面していました。

そして、その数は2025年には60%まで上昇すると想定され、
水不足以外でも世界の約40億人の人が
現在、1年間の内1ヶ月は
何らかの【水問題】に見舞われているというデータもありました。
この何らかには、水道料金が払えないという
【水問題】も含まれています。

そして国連は、SDGsの目標6にこのテーマを掲げ、
水資源管理計画を抜本的に見直すと同時に、
【持続可能な水の開発】を推奨しています。

その代表が、【海水の淡水化】プロジェクトです。
しかし、この取り組みは決して新しい取り組みではなく、
1980年頃から中東や北アフリカを中心に進められ、
現在では、日本も含め中国、アメリカなど
世界の173の国や地域で取り組まれています。

ちなみに、アメリカ・カリフォルニア州のサンディエゴの上水道の10%、
日本の福岡市にある「まみずピア」では、
福岡市民の約15%(25万人分)の飲料水が海水から作られています。

この【海水の淡水化】の工法技術は、大きく2つの方式に分かれています。

1つ目は、「多段フラッシュ(Multi-Stage Flash)」という方式で、
海水を熱して蒸発(フラッシュ)させ、
再び冷やして淡水を作り、
さらに熱効率をよくするために多数のプラントを組合せる淡水化です。

2つ目は、「逆浸透法(RO/Reverse Osmosis)」といって、
海水に圧力をかけて「逆浸透膜(RO膜)」と呼ばれる膜を通し、
淡水を造る方法です。

しかし現在、これらの【淡水化処理施設】に問題が生じています。

それが、海水処理における膨大な化石エネルギーの消費と、
淡水化により生じる大量の「排塩水(ブライン)」です。
特にこの「排塩水(ブライン)」が生産量に対し大量に排出されるため、
施設から海に戻されることにより、
海水の酸素濃度の低下や塩分の急増など、
生態系に混乱をもたらし新たな環境問題を生んでしまったのです。

とはいえ、この産業は新たなビジネスチャンスとも言われ、
世界で様々な研究開発が進められています。

そして、【水のテクノロジー】の研究開発は、これだけではありません。
個人的にもっとも注目しているのは、
【空気を水に変える】テクノロジーです。
既にアメリカ・フロリダ州の「アクア・サイエンス」は、
この技術を使い、現在は緊急時用ですが、
1日に約6000人分の飲料水の供給が可能な施設を作りました。

他にも風力発電と連動した「人工井戸」の開発や
再生可能エネルギーの施設との連携による開発などが進化中です。

生命の源は、【水】です。
地球が46億年前に誕生し、そして水が誕生し、水の中で生命が生まれ、
長い時間をかけて進化し人類が誕生しました。
【水】を大切にすることは原点回帰であり、
地球や人に優しくすることです。

テック産業アナリスト のと裕行でした。
ありがとうございました。

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