ヘイトクライム(憎悪犯罪)×AAPI(アジア・太平洋諸島系アメリカ人)=アジアンヘイト問題2

日本と大阪市のヘイトスピーチ

コラム93号は前号に引き続きヘイトスピーチについてです。

日本では「ヘイトスピーチ解消法」が2016年6月3日から施行されました。しかしこの法律には罰則が含まれていないことには物足りなさを感じています。
みなさんは「ヘイトスピーチ」の意味をご存じでしょうか。
「日本以外の国や地域の出身であることを理由にして地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動」
と定義付けられています。

そして、その直後に「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例施行規則」が2016年7月1日から施行されています。

さて、その大阪市の22年前に遡ってみましょう。1994年、大阪市の人権室と教育委員会の共催の事業として
第一期大阪市民劇団かけはし座、旗揚げ公演「決意　星ふる丘の上で」が市立の劇場と小学校の講堂での巡業講演としてスタートしました。
自らの出生を明かす2人の中学生の心の葛藤を、深刻な影を落とす、いじめ問題を織り込んで、鋭くえぐり出している作品で、私はその中学生の担任の先生役として、当時久しぶりに舞台に立ちました。
主人公の心と家族の気持ちに向き合いながら、劇団員にも差別に悩んでいる仲間が何人かいて、それについての話し合いを稽古中によくしたものです。

フィナーレで主人公は、星ふる丘の上で差別に決別する決意を語ります。その決意が劇団関係者、行政関係者そしてお客様に深く突き刺ささりました。当時の大阪市長、磯村さんと熱い握手を交わしたことは記憶に新しいです。

それから16年遡りましょう。
1978年アメリカ合衆国、シリコンバレー・ホームステッド高校のある演劇舞台に私は立っていました。
留学中、半年間、毎日、ドラマクラス（演劇の授業）を受講していたのです。
演劇のクラスは英語力トレーニングになることもあってか、中国、南米の移民の方もいました。ヨーロッパの方もいたと思います。

1978年前後をピークに、約111万人の中国系ベトナム人（ベトナム華人）が移民もしくはボートピープルとして、ベトナムから国外に流出しました。アメリカ合衆国はこの111万人のうち82万人を受け入れたと言われています。

ベトナムからのボートピープル。数ヶ月前に船で家族・一族と共に太平洋を渡り移民として入国してきた舞台仲間もいました。船上の話もエクサイティングで、不幸に亡くなられて方もいらしたそうです。着岸した時、英語力はゼロでしたが、あっという間にドラマの舞台に立っていたのです。
そのベトナム華人の力強さとパワーは、差別の中にあっても、凄いなと感じたものでした。
そして、彼らに積極的に英語を教える家庭教師(tutor)を勝手出るアメリカ人のボランテイアの同級生にも関心しました。

バイデン米大統領は5月20日、新型コロナウイルスのパンデミック（世界的大流行）の中でアジア系住民に対するヘイトクライム（憎悪犯罪）が急増していることに対処する法案に署名し、「新型コロナウイルス・ヘイトクライム法案」が成立しました。

　　同法は司法省に新型コロナに関連するヘイトクライムの調査迅速化や、この取り組みを監督する担当者の配置を求めます。また、ヘイトクライムの通報ホットラインを開設する州に補助金を提供し、アジア系に対する犯罪に関する地元当局の公表を支援するよう連邦政府に指示しています。
米国の主要8都市でのアジア系住民に対するヘイトクライム（憎悪犯罪）が2021年に前年比で約4・4倍に急増したことが、カリフォルニア州立大サンバーナディーノ校の憎悪・過激主義研究センターの調査で判明しています。

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