環境省が取り組むSDGsプロジェクト『ZEB(ゼブ)』
ZEB(ゼブ)の定義、その目的は⁈
みなさんは、ZEB(ゼブ)という言葉を耳にされたことはありませんか?
まだ一般的な言葉として馴染みが薄いかもしれませんが、みなさんが働くビルや暮らす住宅、特に新たな建築物における基準法や、場合によっては不動産の価値基準にも影響する、将来もっとも重要な建築関連のキーワードとなることは間違いありません。
まずはそのネーミングですが、Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の頭文字からなる略称で「ZEB(ゼブ)」と言います。
私たちが仕事や生活をするために消費されるエネルギーは、データによると約3割を占めています。
それらのエネルギー消費がなされる住宅・ビルなどの建造物において、脱炭素化に向けた取り組みの充実・強化が不可欠な時代となりました。
また「パリ協定」や「SDGs」の目標達成に向けて、政府によるエネルギー政策の最重要テーマとしてこの「ZEB」による補助事業、認定制度、登録制度を、環境省と国土交通省が中心となり取り組むことになったのです。
具体的には電気などのエネルギーの使用量を多く減らすために、高い断熱性能の壁や窓、電力消費の少ないLED照明などの機器やテクノロジーを使い、それでも減らせない分を太陽光発電などの再生可能エネルギーを利用してゼロエネルギーという考えで設計・建設されたビル、住宅のことをいいます。
また、あくまでも計算上ゼロエネルギーということがポイントですが、簡単に説明すると【ビルで使うエネルギーの省エネ】と【ZEBで作るビルの創エネ】を合わせゼロエネルギーにするという政府の施策です。
そして、「ZEBの定義」は、外部から電力やガスの供給を受けていても、最低条件のビルのエネルギー消費を、基準エネルギー消費量に比べて「5割以上削減」をクリアできていれば、ZEBであると認められます。
ZEB(ゼブ)は4段階に分かれ認定制度がある
また、「ZEB」には、4段階の種類があり、エネルギー消費を
1 100%削減してエネルギー収支をゼロにして、更に余ったエネルギーを売電などで販売できるビルを「ZEB」
2 75%以上削減させたビルを「ニアリー(Nearly)ZEB」
3 50%以上削減させたビルを「ZEBレデ(Ready)」
4 ZEB Readyを見据えた建築物として、省エネと創エネ設備の措置を講じたビルを「ZEB Oriented」
以上、4段階に区別しています。
そして、「ZEBレディ」以上の建物は「ZEB」として扱われ、国土交通省の「建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)」に基づき第三者機関がZEBの認定を行っています。
詳しくは環境省の資料をご覧ください。
創エネ・省エネ・蓄エネの三位一体の理想と現実
ZEB化を実現することで様々なメリットがあります。
建築物の運用に係る光熱費を削減でき、自然エネルギー(採光、通風)を活用して省エネを実現しながら
快適性・生産性を向上できます。
また、環境・エネルギーに配慮した建物は、他の一般的な建築物と比較して不動産としての価値の向上、街づくりとしての魅力の向上などにも繋がるります。
そして、災害時において必要なエネルギー需要を削減でき、さらに再生可能エネルギー等の活用により部分的にではあってもエネルギーの自立を図ることもできます。
しかし、国内外で様々な問題点も存在します。
現在、ZEBに世界標準はなく国によっても、国内においても定義はあるが、明確な範囲基準が判断しにくく実現が困難だと言われ、認定をクリアしても建物単位で理論と現実に相違があるという指摘もあります。
例えば定義通りに考えると再生可能エネルギーの設置が必要不可欠ですが、太陽光発電設備のスペースが取りにくい場合も現実にはあり、また何よりも初期投資が高いのも問題点となっています。また、設計会社やゼネコンによっても工法や業者への統一など様々な問題も存在します。
今なら補助金や支援事業が役に立つ
政府が積極的に取り組む事業だということもあり、ZEB化で利用できる主な補助金や支援事業もあり、ZEB化による、コスト高を解消する取り組みもあります。
具体的には、環境省2022年度予算に盛り込まれた「建築物等の脱炭素化・レジリエンス強化促進事業」、および経済産業省資源エネルギー庁2022年度予算の「住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業」をもとに一部ご紹介します。
1.新築建築物のZEB化支援事業
再生可能エネルギー設備や蓄電池などを導入し、停電時にもエネルギー供給が可能であって、換気機能などの感染症対策も備えたレジリエンス強化型ZEBの実現と普及拡大を目指すもので、2つの事業があります。
① 「レジリエンス強化型の新築建築物ZEB化実証事業」
災害発生時に活動拠点となる公共性の高い業務用施設について、停電時にもエネルギー供給が可能なレジリエンス強化型のZEBに対して支援するもので、上限5億円で補助率は2/3~1/2です。
② 「新築建築物のZEB実現に向けた先進的省エネルギー建築物実証事業」
新築ZEBに資するシステム・設備機器などの導入を支援するもので、上限5億円で補助率は3/5~1/3です。
2.既存建築物のZEB化支援事業
ZEBのさらなる普及拡大のため、既築ZEBに資するシステム・設備機器などの導入を支援するもので、2つの事業があります。
① 「レジリエンス強化型の既存建築物ZEB化実証事業」
災害発生時に活動拠点となる公共性の高い業務用施設について、停電時にもエネルギー供給が可能なレジリエンス強化型のZEBに対して支援するもので、上限5億円で補助率は2/3です。
② 「既存建築物のZEB実現に向けた先進的省エネルギー建築物実証事業」
既築ZEBに資するシステム・設備機器などの導入を支援するもので、上限5億円で補助率2/3です。
3.住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業
ZEB設計ノウハウが確立されていない民間の大規模建築物(新築:1万㎡以上、既築:2000㎡以上)について、ZEB化の実証を支援し、その成果の横展開を図るもので、実証支援の補助率は2/3となっています。
SDGsの実現は⁈
2030年のSDGsの目標達成、2050年のパリ協定によるカーボンニュートラル実現、世界は脱炭素社会の実現に向けて社会経済は動き出しています。
今回の建築、不動産業界だけではなく、全ての業界がこの問題を避けて通るわけにはいきません。
私もあなたも今何が出来るのかを問われています・・・。
ZEBに関するさらに詳しい情報は、環境省のホームページ【ZEB PORTAL】(ゼブ・ポータル)をご覧ください。(https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/01.html)
テック産業アナリスト のと裕行でした。
ありがとうございました。
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