シリコンバレーの衝撃が世界のテック産業を揺るがしている
シリコンバレーの成長神話に終止符が?!
2023 年 3 月 10 日、シリコンバレー銀行(SVB)が取り付け騒ぎの末に経営破綻しました。
そして、アメリカ当局が SVB の預金を全額保護することで最悪の事態は避けられたものの、 ベンチャーキャピタルから投資を受けるテック企業の半数が SVBとの取引があり、ベンチャーキャピタルが資金を投入する新規上場予定のスタートアップの 40%以上が SVBの保証を受けていました。
その結果、たった 1 週間で約 16 兆円の預金が流出しただけでなく、ある経営者はアメリカ の「スタートアップやイノベーションが 10 年以上は後退する」と、事の影響の大きさを示唆していました。
またそれらを裏付けるように、3 月 22 日、投資会社の JP モルガンチェースの分析による と、2022 年以降に預けられた SVB 以外の中小銀行から更に約 130 兆円の預金が流出して いて、その約半分の約 65 兆円が、SVB の破綻後に流出したそうです。 これにより、スタートアップやベンチャーである「気候テック」、太陽光発電などの「エネルギーテック」に多大な影響を及ぼしています。
今までのように SVB による低金利ローンを受けられなくなったテック企業は、しばらくは資金繰りに悩まされ経営方針の変更も余儀なくされる可能性もあります。私はこれらの報道を受けて、「シリコンバレー成長神話」が遂に終止符を打つ時が来たと寂しさを隠し切れませんでした。
しかし、4 月 20 日、更なる衝撃が世界のテック産業に走りました。 それが、シリコンバレーに本社を構えるアップル社が始めた預金サービスです。
なんと日本のメガバンクの約 4000 倍の金利に?!
このサービスの内容は、アップル社がゴールドマン・サックスと組んだ預金サービスで、クレジットカード「アップルカード」の利用者を対象に、手数料無料で、最低入金額も最低残 高もなく口座開設ができ、その普通預金口座の利率が、なんと「4.15%」です。 この数字がどれだけ凄いのかというと、アメリカの主要銀行の預金口座の利率は「0.01%」 で、全米の平均金利と比較しても約 10 倍以上に当たります。 ちなみに日本のメガバンクの利率は「0.001%」、つまり約 4000 倍になります。
そして、iPhone のアプリによるウォレットにより、口座開設から支払い、引き落としなど
全ての管理を iPhone さえあれば簡単に出来るだけではなく、ゴールドマン・サックス経由 のアップル預金口座は、米連邦預金保険公社の保証対象となり、預金の安心安全策まで講じていました。これは、十分なインセンティブとなり、顧客の囲い込みに結び付き、またこの サービスにより、iPhone から他社に切り替えることも少ないでしょう。
(この事は、今後サービスが肥大化した場合に独占禁止法に触れる可能性がある事は頭においておきましょう。)
・アップル社は金融機関と比べて遥かに経営状況がよく手元資金も潤沢に持っている。
・スマホは多くの人に行き渡っており、その利用回数は一日相当数に及びアップルというブランドは、銀行との関係より遥かに親密な関係にある。
・新サービスは最低残高の制限もなく、あまりお金を持っていない人でも気軽に預金できる。
日本でのサービスは未定だが・・・
米国等の国々ではiPhoneのシェアは高くありませんが、日本は例外で圧倒的にiPhoneのシェアが高いことをご存知でしょうか? 私のように、それだけアップルのファンは日本に多いようです。
現在、日本でのサービスは未定です。しかし、日本の金融当局の認可がスムーズにいかなかったとしても、年々グローバル化するフィンテック業界において、ほぼゼロに近い金利の日本の銀行は、アップルの約 4000 倍の金利と戦うことが出来るのでしょうか。 レートの問題はありますが、今は簡単にエクスチェンジ出来ます。
また、この約 4000 倍は、いつまでも続かず、ユーザー獲得のキャンペーンという可能性もあります。
とはいえ 100 倍に落ち着いたとしても、勝ち目はありません。
今回の報道で思うことは、これから銀行は、手の中にあるスマートフォンによりなっていくと思います。
そしてそれは、業界関係なく様々なサービスがテクノロジーによりリンクし進化成長していきます。
つまり、うちの会社はメガバンクだから大丈夫とか大手企業だから大丈夫という安心安全の基準が想像以上の早さで変化し、遂にお金という垣根を超えたグロ ーバルスタンダードがやって来ます。
とはいえ私たちが成長する必要はありませんが、選択と決断が常に迫って来ます。
そのためにも、新たなテクノロジーやスタートアップを生み続けた
「シリコンバレースピリット&アイデア」が、グローバル経済に今こそ必要なのでしょう。
同じタイミングで日本の金融市場には20年以来となる大きな変化が来ています。
それはほぼゼロに近かった金利がいよいよ上昇を始める可能性です。
これまで日本の銀行は金利もサービスも横並びという状態でしたが、私達利用者の為にも、競争が一気に激化する日を待ちたいものです。
テック産業アナリスト のと裕行でした。
ありがとうございました。
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