サーキュラーエコノミー×エコテック=プラスチック資源循環促進法 “プラ新法” 2
テック産業アナリスト-のと裕行のライフイノベーションコラム-89

コラム

海洋プラスティック問題の解決に向けて

海洋プラスティック問題とは何なのでしょうか?

環境中に流出したプラスチックのほとんどが最終的に行きつく場所が「海」です。プラスチックごみは、河川などから海へと流れ込むためです。一度流出したプラスチックごみは、例えば海岸での波や紫外線等の影響を受けるなどして、やがて小さなプラスチックの粒子となり5mm以下になったプラスチックは、マイクロプラスチックと呼ばれています。
マイクロプラスチックは細かくなっても自然分解することはなく、数百年間以上もの間、自然界に残り続けると考えられています。

以下、海洋ごみが分解されて細かくなる年数表です。

(上記の内、アルミ缶以外は全てプラスチックが主成分の「海洋プラスチックごみ」です。↑)このマイクロプラスチックは、日本でも洗顔料や歯磨き粉にスクラブ剤として広く使われてきたプラスチック粒子(マイクロビーズ)や、プラスチックの原料として使用されるペレット(レジンペレット)の流出、合成ゴムでできたタイヤの摩耗やフリースなどの合成繊維の衣料の洗濯等によっても発生しています 。

マイクロプラスチックは食物連鎖を通じて多くの生物に取り込まれています
製造の際に化学物質が添加される場合があったり、漂流する際に化学物質が吸着したりすることで、マイクロプラスチックには有害物質が含まれていることが少なくありません。そして、既に世界中の海に存在するマイクロプラスチックが海洋生態系に取り込まれ、さらにボトル入り飲料水や食塩などに含まれている可能性が指摘されています。人を含む生物の身体や繁殖などに、具体的にどのような影響を及ぼすのか、詳しいことはまだ明らかにされていません。しかし、本来自然界に存在しない物質が広く生物の体内に取り込まれた結果を、楽観視することは許されません。

ダボス会議で知られる世界経済フォーラムは、現在、海へ流入している海洋プラスチックごみは、アジア諸国からの発生によるものが、全体の82%を占めるとしています。2050年にはプラスチック生産量はさらに約4倍となり、それに応じた海洋へのプラスチック流出の拡大により、「海洋プラスチックごみの量が海にいる魚を上回る」というショッキングな予測を発表しています。

日本のプラスチックごみ問題と、大阪で見つかった一つの解決方法について

日本はプラスチックの生産量で世界第3位です。特に1人当たりの容器包装プラスチックごみの発生量については、世界第2位と、この問題に国際的な責任を持たなければならない立場にあります。実際コンビニの普及もあり、国内で年間に流通するレジ袋の枚数は、推定400億枚で、一人当たり一日約一枚のペースで消費されています。また、ペットボトルの国内年間出荷は227億本に達します。
日本では廃棄されるプラスチック(廃プラ)の有効利用率が84%と特に進んでいるとされていますが、
全体の57.5%は、燃焼の際にエネルギー回収をするものを燃やす
「サーマルリサイクル」という処理方法に頼っています。
これはつまり、化石燃料を燃やし、CO2排出しているということですので、今後ますます深刻化する地球温暖化への対策まで含めた視点で見たときに、とても資源が有効かつ持続可能な方法で利用されているとは言えません。

マテリアルリサイクル:廃プラを原材料としてプラスチック製品に再生ケミカルリサイクル:廃プラを化学的に分解するなどして、化学原料に再生サーマルリサイクル:廃プラを固形燃料にしたり、焼却して熱エネルギーを回収

また日本は、この廃棄プラスティックとは別に年間150万トンものプラスチックくずを「資源」という位置づけで中国を中心にアジア諸国に輸出していました。しかし、世界最大の輸入国である中国がリサイクル処理に伴う環境汚染などを理由に2017年から輸入規制を始めたことで、日本のプラスチックごみの行き場がなかなか見つからないといった問題も起こっています。しかしプラスチックくずの海外輸出については、プラスチックごみの処理を、処理体制が整っていないアジアの途上国に実質的に押し付けることにより、アジアからの海洋プラスチックごみ流出を加速させることにつながるとして懸念する声もあります。他の輸出先を探すのではなく、輸出すること自体を見直すべきではないでしょうか。
(ここまでのコラム文章及び表はWWFジャパンさんのHPを参考に記載させていただきました。)

ここでプラスティックの廃棄でもなく、輸出でもない新たな解決方法の研究についてご紹介しましょう。
大阪で見つかったイデオネラ・サカイエンシスという面白い新種の細菌が主人公です。
京都工芸繊維大の小田耕平名誉教授、木村良晴名誉教授の研究グループ
慶應義塾大学理工学部の吉田昭介助教(現京都大学工学研究科)と宮本憲二准教授
帝人株式会社
株式会社ADEKA
が共同研究を行い、ポリエチレンテレフタレート(PET)を分解して栄養源にしている
真正細菌の一種を発見、その分解メカニズムの解明に成功しました。
大阪府堺市のリサイクル工場で採取された試料から発見されたその地名にちなんで
イデオネラ・サカイエンシスと命名されたそうです。

小さく刻んだ厚さ0.2mmのPET片を6週間で二酸化炭素と水に変えてしまう!!
京都工芸繊維大の小田耕平名誉教授が2005年に分離に成功し、2016年に米国科学雑誌「Science」に掲載されています。↓
https://www.science.org/doi/10.1126/science.aad6359

ペットボトルはマイクロプラスティクによる海洋汚染の発生源となっていて、
「PETを分解できる微生物は、分解対象が多い場所(ペットボトルのリサイクル工場)にいるはずだ。」
という仮説に基づいて小田名誉教授のチームが一生懸命、堺市の工場からの試料の中を探したことが、この画期的な成功につながったと思います。
これ以来、世界中の多くの優秀な研究者たちが細菌によるプラスチック分解がどのように行われているのかの調査を始めました。
このように廃棄やリサイクルではなく、新しい解決策として細菌によるプラスチック分解の研究を加速・拡大させ
近い将来、より強力に、スピーディに分解を可能とする細菌及び細菌群を作り出す!!
いかがでしょうか⁉️
私はこの大阪で発見された新しい細菌達に期待したいと思います。

しかし、現実にはこの細菌だけでは、年間800万トンのプラスチックゴミ処理は、G20(大阪サミット)で決まった2050年までに流出ゼロにする目標には全然間に合いません。
サーキュラーエコノミー(プラスチック循環)をするためのプラ新法の4Rに、まずは私たちは積極的に取り組んでいきましょう。

テック産業アナリスト のと裕行でした。 
ありがとうございました。

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